スタートライン

それから僕は、居酒屋と海の仕事をほとんど休まずに働きました。

訪れる多くのお客様に、たしなめられ、慰められ、教えられ、美しい景色に励まされ、少しずつ僕の心も変わっていきました。

居酒屋の女将さんは、僕をいらないと言った後もずっと怒ってくれて、叱ってくれて、一緒に泣いてくれました。

何度も大喧嘩して、思いっきり蹴飛ばされたり。僕が暗い方向へ間違ったほうへ行こうとすると全力で平手打ちをして元に戻してくれました。

オーナーにも顔が腫れあがるほど殴られて、車から引きずり出されて、ボコボコにされたこともあります。

でも、次の日、湿布を張って包帯ぐるぐる巻きにしてある女将さんの手、オーナーの手を見て、僕はなんて愚かなんだろうと胸をえぐられる思いをしました。

僕は本当に、精神的に幼く未熟者です。

周りに助けられ、環境に救われ、己が無力で、未熟で、こんなにも多くのことを知らな過ぎたのだと気が付いたとき、僕はようやく本当の意味で男として、自分の選んだ生き方としてスタートラインに立てたのだと思います。