捨てられて拾われる

あの大地震の瞬間、僕はちょうど海の近くにいて津波警報を知らせる大きなサイレンに驚き慌てていました。その後TVを付けて、事の大きさにさらに驚いたのを覚えています。

遠く離れた場所での災害は、この島にももちろんのこと大打撃を与えました。
それは、一気に観光のお客様のキャンセルが相次いだことです。
この島は、観光の島です。島にたくさんの人が訪れて仕事が成り立っているのです。

しかし、この震災で多くの人々がその余裕を失いました。
僕のいたお店も、入っていた予約が次々とキャンセルされ仕事がなくなりました。

 

そして、それから間もなく、僕は突然の解雇処分を言い渡されました。

「地震で、スタッフをそんなに養っていられなくなった」「明日から来なくていいよ」

突然のことで、頭の中に電気が走ったような衝撃と手足に血の気が引く感じがありました。

僕は、新しく入ったこのお店のオーナーさんとやはりうまく人間関係を築くことが出来なかったのです。
必要な人材とは思われなかったのです。

しばらく、どうしたらいいのか分からず、ただ大人しく寮に戻り、ただ茫然と部屋で座っていました。

しかし、僕は運が良かった。
実は、僕が入ったお店はまだ新しく出来たばかりのお店だったので体制が整っておらず、
スタッフ用の寮がまだありませんでした。

なので、僕はオーナーの知り合いの方の家に仮住まいさせてもらっていたのです。

そのオーナーの知り合いは、マリンショップと居酒屋を経営していて他にも何人かスタッフを抱えていました。
そして、そのマリンショップのオーナーが、この件を聞きつけて僕を雇うと言ってくれたのです。

これは、後々知ることになるのですが、もともと、このマリンショップのオーナーは、僕が最初のオーナーの下では長く勤められないと踏んでいて、きっと自分の店に来ると分かっていたらしく、仮住まいしていた期間、僕をずっと見込みがあるかどうか観察していたのだそうです。

さらに、そのマリンショップのオーナーは、過去に東京の歌舞伎町でその名を轟かせていたことがある非常に珍しい経歴を持っていて、もちろん2丁目のこともよく知っていたため、僕の性別のことをすんなり受け入れてくれたのです。

「悪いけど、俺はお前のこと男としか見てないから」そう言ってくれたのです。

 

こうして、僕は紆余曲折を経て今の会社に拾われたのでした。