特別講演会

特別講演会(07.02.24)

参加者は40名でした。性同一性障害の当事者以外にも、パートナーやご友人も参加してくれました。

第一部では性同一性障害の当事者3名が講演を行いました。

一人目は、有限会社ファインブルーの社長である尾崎さんで、起業に至るまでの道程や今後のヴィジョンをお話してもらいました。

実際に起業をされた当事者のお話を聞く機会というのはなかなかないので、とても良い機会だったと思います。

起業に興味のある当事者は意外と多いので、今後もこのようなテーマを掲げて講演会や勉強会などをやっていきたいと思いました。

次に、本法人スタッフでもあり、現在専門学校に通っている小野が講演をしました。

彼は現在、女性として学生生活を送っているのですが、男性として生活することを望んでいます。

就職活動の真っ最中なのですが、希望する性(精神的性別)で働くにはどのような方法があるのか、ということをメインに話してくれました。

就職というのは、当事者にとっては一般の人以上に大きな意味を持つので、皆とても興味深く聞いていたように思います。

最後に、男性として生活しているFTM(戸籍上は女性であるが、精神的性別は男性)の二ノ宮が講演をしました。彼もまた本法人のスタッフです。

戸籍上の性とは逆の性で生活することを選ぶ際には、多くの人は治療することを真っ先に考えます。

戸籍上女性である人が男性として生きる場合、男性ホルモンの投与により、声変わりしたり、月経が停止したりします。

それによって当事者は精神的苦痛から解放されます。しかしながら、一度ホルモン投与を開始してしまうと一生続けなければならず、また副作用もあります。

「男性として生きるなら、ホルモン投与をしないと無理だ」と思っている当事者が多いのですが、
二ノ宮の場合は、治療は一切せずに男性として生活しています。
職場でもオーナーの理解があるので、通称名を使用し、男性として働いています。
そのような彼の話は、まだ希望の性(精神的性別)で生活できていない当事者にとっては大変貴重なものであったと思います。

また彼は、当事者が「僕達は大変なんです、辛いんです」と訴える必要があった時代は終わった、と言いました。

TV等で取り上げられた影響もあって、現在では多くの人が性同一性障害という言葉を知っています。

ですから、きちんと説明することが出来れば、大抵の場合は受け入れてもらえるのです。

「言ってもどうせ分かってもらえないだろう」

「変態扱いされたらどうしよう」
そうやって当事者のほうが社会に対して壁を作っているのではないか。

これからは当事者が変わらなければならない時代ではないのか、と彼は言いました。

これは私たちGIDmediaの考えでもあります。

時代が変わったのだから、当事者だって変わらなければならないと思います。

いつまでも自分たちを特別扱いしていたのでは、私たちが自然に社会に溶け込める日はやって来ません。

「色んな人がいて当たり前。性同一性障害だって別に特別なことじゃない。」

そんな社会になって欲しいという願いを込めてGIDmediaは活動して行きます。

その姿勢を、今回の講演では二ノ宮が表現してくれ、これは実際に同年代の当事者の心を動かしたようです。

講演終了後のアンケートにおいても、彼の考えに共感してくれていたり、刺激を受けたというような意見をいくつも頂けたので、
自分たちの進む方向は間違っていない、と確かな手ごたえを感じました。

第二部は、テーマを3つ用意して、各自希望するテーマのグループへ分かれてもらい、討論会を行いました。
参加者は30名でした。

事前アンケートの結果、「就職」「恋愛」「カミングアウト」という3つのテーマを扱うことになりました。

この3つのテーマの中で1番人気があったのは「就職」でした。(15名)

小野の講演についての部分にも記載しましたが、性同一性障害当事者にとって就職というのはとても大きなテーマなのです。

このグループに参加してくれた人は、半数以上がすでに就職している当事者だったのですが、
の就業スタイルはそれぞれ異なり、最初からカミングアウトして望みの性で働いている人もいれば、
まだ誰にもカミングアウトはしておらず、我慢して戸籍上の性別で働いている人もいます。

カミングアウトした人は、「どのタイミングでしたのか」「誰に言ったのか」などを話してくれました。

【社長や人事担当など必要最低限の人にだけに伝え、それ以外の人は戸籍上の性別は知らない。】

このようなスタイルを取る当事者は多いようです。
ただし、これは最初からその性別で通用する外見と中身を備えている必要があります。

そうでない場合は、まずは戸籍の性別で働き、途中から移行することになります。

この移行方法についても様々なやり方があり、いかに自然に受け入れてもらうかと皆それぞれに考えています。

「カミングアウト」のグループでは、親へのカミングアウトを主なテーマに話し合いをしました。

親に自分が性同一性障害であることを言いたいけど、いつどのように言うべきかで悩んでいる、という当事者がいたので、
すでに親へのカミングアウトを終えている当事者が実体験を語ったり、親の立場である人からも意見をもらったりしました。

ここでのまとめとしては、やはり親にも受け入れるための時間が必要である、ということです。
家族だからこそ、時間が必要になってくるのだと思います。

当事者本人は、少しでも早く望みの性での生活を得たいが為に、
親にも早く理解してもらおうと焦ってしまうことが多いのですが、
親の気持ちも考慮して、じっくり時間をかける必要があると言えそうです。

「恋愛」グループでは、結婚が主なテーマとなりました。
結婚したいか?結婚することのメリットは?などを話し合いました。

性同一性障害の人の戸籍の性別変更が法律で認められたので、結婚できることになったわけですが、

戸籍の性別変更の条件をクリアできる者はまだ少ないのが現状です。
そのような現状から、「同性婚」もテーマに挙がりました。

このグループには、当事者のパートナーの方も2名参加してくれ、貴重な意見をもらうことが出来ました。

第2部は45分間だったのですが、話し始めるとあっという間で、「もう少し時間が欲しかった」という意見をたくさん頂きました。

この討論会だけで1つのイベントとして成立しそうなくらい、色々な人が積極的に意見を出してくれました。

当事者同士の出会いの場としての交流会などは比較的多く開催されているのですが、

このようにテーマを設けて真面目に話し合うような機会というのが今までなかったので、

当事者にとっても、友人・パートナーにとっても大変有意義な時間だったのではないかと思います。

今後、より多くの人が参加し意見交換できるように討論会などを企画していこうと思います。

今回のこの設立記念イベントは、私たちにとって初めてのイベントだったのですが、

多くの方にご参加いただき、また貴重な意見もたくさん聞くことが出来たので大成功だったと思います。
終了後にアンケートをお願いしたのですが、

「講演会とかに来るのは初めてだったけど、本当に来てよかった」
「講演を聞いて、自分ともっとしっかり向き合わなければいけないと感じた」

「また参加したい」
など、ありがたい感想をたくさん頂くことが出来ました。

また、今回、設立記念としてGIDmediaオリジナル冊子を作成し、参加者の方々へ配りました。

当事者ではない友人や家族などにも協力してもらい、たくさん時間をかけて作成した冊子です。
私たちの現在の想いすべてがここに詰まっています。

この冊子を読んだ人が、少しでも励まされたり、勇気を持てたり、実際に何か行動してくれたら嬉しく思います。

まったくの無名の団体である私たちも、少しずつではありますが、応援してくれる人や協力してくれる人が増えて来ました。

このイベントでの出会いも今後の活動につなげて行きたいと思います。