Living Library レポート

先月、私渡邉と二ノ宮がLiving Libraryという企画に参加してきました!

Living Libraryは、「『人』を生きた「本」として貸し出す図書館」のことで、
デンマークのNGOにより発案され、現在では30カ国以上で行われています。

日本では、昨年末に京都で初めて開催され、今回私たちが参加した企画が2例目ということになります。

   Living Library.org
    http://living-library.org/

Living Libraryには、普段接することが少なく無知や誤解により偏見をもたれやすい『人』が「本」となり、
読者と1対1の対話によって相互理解を深め、不和や対立をなくそうという目的があるそうです。

「本」は移民・難民やホームレス、ハンディキャップのある者、そしてLGBT※など
様々なバックグラウンドを持つ『人』であり、元マフィアや農家の人、詩人などの「本」もあるそうです。
 ※LGBT:Lesbian、Gay、Bisexual、Transgenderの頭文字。セクシュアルマイノリティの意としても使われる。

この図書館で貸し出される本には、すべて「本」自身がつけた「タイトル」と「あらすじ」があります。
それを見て、読者は自分の興味ある「本」を借りることができるのです。

私と二ノ宮がこの企画に参加したきっかけは、主催であるBlue Birdsという有志団体が
NHK教育「ハートをつなごう」を観て今回のテーマをLGBTと設定し、連絡をくれたことにあります。

この企画を聞いた時、私は「本」として参加する気はまったくありませんでした。

なぜなら私という「本」はまったく地味で、難解で、書いてあるものの意味を見つけることも困難、
というよっぽどのマニア向け図書(笑)だと自己分析していたからです。

読者の求める「本」を想像しても、喜怒哀楽や起承転結がはっきりしていて、大きなライフイベントがあり、
最後はめでたしめでたしとなるものがいいんじゃないかなぁとも思っていました。

けれど、「ハート」を観てくれた(かわいい)スタッフのみんなが「ぜひ本に!」と声をかけてくれたので、
即答したのでした(冗談です。結構悩みました。)

「本」になることが決まると、すぐに「あらすじカード」の宿題をもらいました。

そこには①読者から呼んで欲しい名前、②タイトル、③あらすじ(150字くらいだったかな)を
書くのですが、これがとても難しく、けれど楽しい作業でした。

①は悩まないとして、②を決めるために③を書き、思いついた②からさらに③を直していって、
自分という「本」を誤解させないよう、大きすぎず、小さすぎず、謙虚に、でも大胆に、と3時間くらい悩みました。

作成したあらすじカードが当日どれだけの効果をもたらしたかはわかりませんが、
自分自身を客観視して他者に売り込むというその過程はとてもおもしろかったです。

さて当日はというと、今回はとある高校の授業内での実施ということで、読者は全員高校生!若い!

好奇心満載の、あけすけな視線をとても好ましく思いました。
(ちなみに、高校におけるLiving Libraryの実施は欧米以外では初めてだったそうです。)

そもそも今回の図書館は初めからLGBTの本がそろっています、というふれこみなので、
そこに並ぶ本は全員LGBTであったわけです。

20人の人間が並んでいて、それらがすべてセクシュアルマイノリティ、っていう状況は
マジョリティ界ではなかなかないものでしょう。

また、すでに相手にその認識(全員LGBTのどれか)があることで、
隠す隠さない/あの人には言えそう、この人は無理そう、などという手間が省け
ラクだな~と感じずにはいられませんでした。

そして、いざ「本」として貸し出される時が来ました。

当然ながら、対話は読者のモチベーションに左右されます。

今回は、あくまで授業の一環として先生が用意した読書の時間、ということを念頭に置き笑、
生徒さんに退屈されないようにと思って臨みました。

読者が読みたいページは読者次第であるし、読み飛ばすこともある、
さらには「本」を読まれるということはなかなか責任重大だなと思いつつ、率直に受け答えをしました。

しかし、今の10代にはマイノリティについても
「本人が言うならその選択を尊重するまで」という認識が広がっているのかしら、と少し感じました。

他者に固執せず、個別化しているともとれますが、それはマイノリティにとって生きやすい環境なのかというと、、、
みなさんはどう思われますか?

2度目の貸し出しの時には、もう少し「セクシュアリティ」に寄った対話をしました。

ボーヴォワールが「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」(『第二の性』)と言っているように、
「性」を受容するというステップは思春期・青年期の大きな課題。

その課題に対して「いいんだよ、そのままで」、「そんなに否定すること無いよ」、「こっちもそんなに悪くないよ」、
「いろんなパターンがあるから、自分の好きなものを選べるんだよ」と言ってくれる大人がおらず
どうしたらいいかわからなくてそこに留まるしかなくなる、進めなくなる子が多いんじゃないかなぁと
これは経験上の感想、かつ、今も変わらぬ現状なんだなぁと感じました。
(その不安を外に出せないという事実もありますが、子どもの事情を汲んでくれる大人の存在がなぁ、、、と。)

私の読者になってくれた子たちは、何かを感じてくれただろうか。

誰でも「本」になりうるけれど、何か1つでも受け取ってもらえたら、それは幸せなことだなと思いました。

また、今回「本」に挑戦してみて「社会とはそれを構成する『人』の集合体である」という当たり前の事実を再認識できました。

帰り道、「本」という大役を終えた20数人の若きLGBTの表情はとても晴れやかで、誇らしげでした。

この企画、もしかしてすごいんじゃないか?という思いも深まっています。

素晴らしい可能性を秘めたLiving Libraryに誘ってくれたBlue Birdsのみんなに、心から感謝しています。
今後もこの日本に植えられたLiving Libraryの種を守り、育てていくことにGIDmediaは協力するつもりです。
これに興味を持つ人が増えて、あちこちで開催されるようになればいいなと思います。

渡邉