Freak Party vol.1 reported by Yukari

前回のVol.0に続き、Vol.1となるFreak Party。今回はGIDmediaとロックバーFreakの共同企画ということで、楽しむ面が増え、より盛り上がっていた。

開演前からすでにフロアはパーティーのような雰囲気。出演者も観客も、知り合いばかりなのでアットホームなこの空間を楽しんでいる。

Freak Party

ステージの前に下りたスクリーンではGIDmediaの活動などをちょろっと紹介したり、前回のFreak Partyの様子や、GID(性同一性障害)当事者の過去の写真や、Freak常連さんたちの写真が公開されていた。そして17時30分、Freak店長である二ノ宮のあいさつからいよいよFreak Partyがスタート!

フロアは満員状態。
オープニングアクトを務めるのは、Freakに行ったことのある人なら知っているだろう、兄貴こと竹下さんが率いる「タケスターズ」。Freak常連さんたちでこの日のために結成されたバンドで、すでに観客はどんなことをやらかしてくれるのか楽しみで仕方ないといった感じだ。

その前に、今回はスクリーンにてそれぞれのステージの前に出演者のインタビュー映像が流れる。今回の出演についてや、GID当事者である二ノ宮のことを語っているのだが、とにかく遠慮がない。悩みやコンプレックスを抱えているのはGID当事者だけではないし、何かをカミングアウトして背負うリスクだって同じ。男だからとか女だからとか関係なく一人の人間として二ノ宮に駄目出しをする愛の溢れたコメントの後、スクリーンが上がり、タケスターズの登場。ボーカルのみっちゃんはこの日初ステージということなのだが、衣裳がもろ狙っている。メイド服に猫耳と萌えーな格好で始まった1曲目はJAMの「DAYDREAM」。かわいく歌うかと思いきや、低く深みのある声でまったく雰囲気の違う曲に仕立て上げた。続くMCで驚いたのが、なんとこの日が全員で揃うのは初めてだということ。衣装もバラバラで、ギターの竹下さんとベースで元Freakのアルバイト、リョウ君は浴衣姿。竹下さんは頼みもしないのに乳首を見せる大サービス。ちなみにこの後本格的に脱いでいた。このゆるゆるな感じのままCoccoの「Raining」。出だしのギターがさっそくヤバい感じだ。だけどみっちゃんの深みのある声はCoccoにとても合っている。間奏で「色んな悩みがあるけど、一歩ずつ進んでいこう」と伝えるみっちゃん。 恰好はネタでも、その言葉はとても切実だった。ラストは木村カエラの「untie」。「伝えたいこと やりたいこと 形にはないけど 表したいの」 GID当事者、またそうでなくとも自分をどう生きたらいいのかわからない人たちへの思いがこの曲に込められている気がした。

竹下さん
タケスターズ Gt.竹下さん

続いての出演者はペンギン爆走(ペンギンダッシュ)。
GID当事者である純君がボーカルを務めるすでに解散したバンドなのだが、この日をきっかけに復活!前のバンドに続き、ここでもインタビュー映像が流れる。ベースのきえちゃんは純君とは専門学校が一緒で、更衣室で一緒に着替えたこともあるし、下着を見られた仲なのだとか。そんな純君の昔の写真を大公開!ってことで、赤ちゃんから現在までを紹介。まさに人に歴史あり(笑) 女の子らしい幼少時代から、成人式での男前っぷりに大いに盛り上がった。

そして復活ライブも兼ねたステージ。青春パンクのようなノリやすく、ポップで明るい曲で観客を魅了した。4年ぶりとは思えない、こちらは流石の一体感(笑) 2曲目の「支え」ではタイトル通り、周りへの感謝の気持ちを歌っている。こんなに大勢の人たちが集まったイベントで「ありがとう」という言葉を歌う彼の気持ちは、もしかしたらこの曲を作った時よりも強くなっているのかもしれないなとふと思った。インタビューでも言っていたが、歌詞にはGIDをテーマにしたものが多い。 メッセージ性が強く、前向きできらきらしたそれは、GID当事者でなくとも勇気を出すきっかけを与えてくれそうだ。
そしてこの日の意気込みを体で表現したというきえちゃん。頭の刈り上げの部分になんと「GID」という刈り込みが・・・!ここまで体を張ってくれる仲間がいて、純君は幸せ者だ。
ラストはブルーハーツのカバーで「人にやさしく」。彼らのオリジナル曲同様、ここにも前向きなメッセージが込められており、フロアから上がる拳に応えるように力強く演奏された。

きえ後頭部
ペンギン爆走 Ba.きえ 髪の毛を持ちあげるとそこにはGIDの文字が!!

3組目は、4KINGS with Shin。
こちらもFreak常連さんたちで結成されたバンドで、Vol.0にも出演した翼くん、光くん、一平くん、雄慈くん、そこに今回初出演のしんくんをプラスしてのステージ。リハの風景が流れたのだが、なんだかもう、ひっちゃかめっちゃか。キムタクもどきとバンドマンたちがダンスの練習をしながらひしめき合っているという受け狙い映像に大いに笑わせてもらった。続くGID当事者へのメッセージは、当事者へというよりも、タケスターズ同様、自分をうまくさらせない人間に対する言葉のように聞こえた。コンプレックスは誰でも持っているもの。自分を出したら出しただけの評価をしてくれる人もいる。そんな中、雄慈君が言っていた「自分が思っているより人間って温かいんじゃないか」という言葉が印象に残っている。出演者含め、今日ここに集まった人の半分以上がGID当事者ではない。少なくともこれだけの人が、男だから、とか女だから、という基準ではなく、その人の人間性を見て人と付き合えるという事実。難しいと思って簡単なことを難しくしているのは自分だと、気づいた人もいたかもしれない。

ライブではもちろん、ダンスではなくカバー曲を披露。hideの「DOUBT」やイエモンの「球根」など、前半バンドの明るい雰囲気とは違うダークな曲を展開。曲は真面目に、MCはゆるく、ボーカルの一平君がメンバーをいじったりと和気あいあいとしている。ブランキーの「赤いタンバリン」やアジカンの「リライト」など、バンド好きなら誰もが知っているバラエティーに富んだナンバーを披露した。楽器隊がしっかりしており、その辺のコピーバンドより重厚なサウンドで思わず頭を振ってしまう。今日で解散ということなのだが、もったいないので次回も是非やって欲しいです。

Dr.雄慈
4KINGS with Shin Dr.雄慈

そしていよいよ!二ノ宮悠生with……の出番。
インタビュー映像では、CDを出したいきさつや、二ノ宮がコンプレックスである歌声を披露することへの思いなどを話していた。もともと卓球勝負で賭けに負けてCDデビューすることになったという二ノ宮。ただCDを出すだけでは意味がない、彼のコンプレックスを克服する過程を表現して、GIDmediaにプラスになればいいと楽曲を選んだFraekオーナーの村木さん。二ノ宮のいいとこなんてない、でも皆に愛されるんだよと語る彼も、なんだかんだと彼を愛しているんだというのが伝わってきた。
―男と女の壁の高さを、二ノ宮はFreakという店を2年間やってきてわかっている。 それを彼を通して知ってくことは、当事者が探しているところへ辿り着くのには早道だと思う。
―外に出るのは大事なこと。
― ダメ人間二ノ宮が、それでも愛されるという所は、当事者にとってはヒントになるかもしれない。だからお店に遊びに来て、彼の生き様に触れてみてはと言う村木さんの言葉は、当事者にとっては一番具体的な励ましだったように思う。二ノ宮を通して、何か自分のヒントになるものを得ることができたら、それだけでも「外に出る一歩」を踏み出した甲斐があるというものだろう。

その後、二ノ宮の女の子時代からのライフストーリーを写真で紹介。こちらも人に歴史ありといった感じで、現在の二ノ宮が出来上がっていく様がおもしろい。そしてステージにギターを持った村木さんと渡辺さん、ベースのろん君が登場。「しがないバックバンド」と自らを言ったが、とんでもない。流石プロ。アコースティック・スタイルでインストゥルメンタルの「Take The A Train」を披露し、大人の渋さで会場の雰囲気を一気にムーディーに染め上げた。続いてブルース「cross roads」では村木さんの渋い歌声に酔いしれる。

村木さん 

そして遂に二ノ宮が登場!
上下白のジャケットにパンツ。 厚底靴にテキーラの瓶を抱えた、アフロ二ノ宮。

アフロ 

さっきまでの渡辺さんの素晴らしいギターソロの余韻を返してほしい。そんな思いを踏み躙るかのようにマイクに向かった彼が歌ったのは「さっちゃん」の替え歌。そう、こいつの本名は「さとえ」。 登場するときも堂々と「悠生」と「さとえ」の名前を叫んでいた。

さっちゃんはね、バナナが大好きだけどお金がないから付けられないの。 かわいそうね、さっちゃん。
腹筋が悲鳴を上げている。無駄にエロい吐息に、無駄に切ない村木さんのハモリ。なんか色々もったいない気がするが、これぞ究極のエンターテイメントだろうか。続いて披露されたのが、なんと松田聖子の「SWEET MEMORIES」。予想外な選曲は、だが二ノ宮の透明感のある歌声とはよく合っていたように思う。2番を歌う村木さんの渋い声に、キモい二ノ宮のコーラス。真面目にいきたいのかギャグにしたいのか。間奏では渡辺さんのピアニカや村木さんのハーモニカが披露され、こんなにふざけているというのにグダグダ感がないというのは流石というしかない。

「恋をしていますか?」という村木さんの振りで、悲しい恋の歌「夏の終わりに魔法は解けた」へ。 切ない曲調と歌詞で、ここは真面目に歌い上げた。そしてある意味メイン(笑)の、彼が大好きなTUBEメドレー。ブーイングをくらいつつ、テキーラを煽ってやっと歌わせてもらっていた。「あー夏休み」「サマードリーム」「THE SEASON IN THE SUN」など一人嬉々と歌う彼。満足げな彼に帰れコールまで飛び出すが、彼はめげない。「大丈夫、まだまだステージは続くから」「愛してるよ」などなど勘違い発言を連発させポジティブさを見せた。

MCでは歌声がコンプレックスだったことに対して、周りから「お前の声大事にしろ」と言われたことや、いつまでも逃げていちゃいけないと思ったこと、そして、一歩踏み出したからこそ見える景色があると語っていた。「この景色をほかの人にも見て欲しい」 壁をひとつ越えた彼だからこそ言える言葉は、清々しく切実だった。「一人じゃ無理なら周りにいる」 彼がそうだったように、背中を押してくれる人は案外いるものだ。もし彼がカミングアウトをしなければ、そんな人間は現れなかったかもしれない。そんなMCを経て、ラスト「いまだから言えるコト」。2番の出だしの歌詞「一歩足を踏み出したらきっと景色も変わるはず」はまさに今さっき彼が言っていたことで、彼の思いがそのまま歌詞になっているような歌なだけに心に響くものがあった。だが間奏で村木さんが演奏を止める。 「やり直そう」 いっぱいいっぱいになって歌えなくなった二ノ宮に村木さんが言った。このとき頷く二ノ宮が、おちゃらけずに言った「伝えたい」という言葉。それはこの日一番切実に響いた言葉かもしれない。村木さんはきっと、彼がやり直したいのも、ちゃんと伝えたいのもわかっていたんだと思う。2回目に演奏された歌は、1回目よりもずっとよくなっていて、うっかり泣きそうになってしまうくらいだった。

トリを務めるのは、「いまだから言えるコト」の原曲を歌っているJERRY BEANS。
「人と違う特別な部分を自分が愛してあげる事で、すごく輝く個性になる」 彼らがGID当事者へ送ったメッセージの一部。先ほどからそうだが、出演者のメッセージはすべての人に当てはまることなのだ。小学校高学年から中学卒業まで不登校を経験してきた彼らが、今度は音楽で人を励ます側の立場になり、勇気を出すきっかけになってくれたらと願いを込めて演奏している。先ほどの二ノ宮にも言えることだが、誰かが一歩踏み出す様や、やさしさに触れて連鎖してゆく様の端っこが、このイベントには見えた気がした。

手拍子で登場した彼らのステージは「変人」からスタート。ふわっとあたたかい雰囲気もあるが、メリハリのきいたバンド感ある曲だ。結成して10年ということで煽りもうまく、続く軽やかでゆったりした「Peaceful Days」、ポップでノリのいいちょっとロックテイストな「カウントダウン」ではフロアが手を上げて、JERRY BEANSの持つあたたかい雰囲気に自然と笑顔になっていた。

JERRY BEANS

カミングアウトしたり、認めてもらいたいのは自分を好きになりたいから。他人にやさしくするのもいいけど、自分にもやさしくしてあげてとMCで語る彼らは、GID当事者ではないが、同じような痛みや悩みを抱えてきたのかもしれない。続く「くだらなく素晴らしい世界」は切なめなバラード調の曲。先ほどまでの曲と比べ、壮大な世界観を感じさせる。そしてメンバーに呼ばれ村木さんが登場した。以前彼らをプロデュースしていたという経緯もあり、今回同じステージで演奏することに!演奏されたのは「ガラスの明日」。ブルースっぽい渋めのギターで、先ほどまでとは違うアダルトな雰囲気を醸し出していた。

曲が終り、二ノ宮コールで彼が再びステージへ。 「いまだから言えるコト」の原曲である「Jerry Beans」を 4KINGS with Shinの一平君、ペンギン爆走の純君、JERRY BEANSと一緒に歌うことに。 「精一杯僕らしくをキメたい」と歌う歌詞はそのまま彼の気持ちだ。

みんなで 

何度も書くが、GID当事者にしか当てはまらないメッセージというのはこの日のイベントにはなかったように思う。生きていれば楽しいことばかりではないし、壁だってあるだろう。自分をさらけ出して理解者を得ることは難しいことかもしれない。けれど、何もしないで変わらないより、一歩踏み出せば二ノ宮や純君のように、開けた景色が見えるかもしれない。GID当事者だけではなく、あの場所にいた人がもし悩みを抱えていたら、何かを踏み出すきっかけを与えたのではないだろうか。このイベントでそのヒントのかけらでも見つけてくれる人が一人でもいたのなら、それはこの日ステージに立った人たちの生き様が人の心を動かせるほど素晴らしいものだったという証明にもなるだろう。人の勇気ややさしさに触れて、それが連鎖していくきっかけをこのイベントは作れたんじゃないかと感じた。(遠藤 ゆか里)

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